形と探偵の何か
Page.1[図書館と探偵]




   1

――東京都西部の、小さな町だった。

少年はそこを訪れる度、彼の店へと向かうことにしている。

――花蜂市、紅葉通。少年の家から、上り電車で2駅。

今日も、そこへ行くつもりで電車に乗っているのだ。少年はあまり満員電車に乗ったことはなかったが、最近は多くなった。

――店の名前は、『日本人形』。詳しい意味は、少年も知らない。

紅葉通駅で降り、駅の南口に出る。だいぶひらけた街だが、繁華街には行かない。

その店は、裏通りにポツンと立っている。

――若い男が1人で、経営している店だ。普段は、便利グッズなんかを売っている雑貨屋。

彼曰く、物理学的に有り得る物なら何でもあるらしい。

尤も、少年がそれを確かめた事はなかったが。

少年はその古ぼけた小さな店の扉を開ける。油が切れているらしい扉は、キーキー言いながら開く。

「いらっしゃい」

――少年を迎えたのは、彼のいつも通りの綺麗な声。一重の着物を着た、不思議な雰囲気の彼が、いつものようにカウンターで雑誌を読んでいた。


   *

 三宮流人【サンノミヤルヒト】。それが今、紅葉通駅前の裏通りをのんびりと歩く青年・岩杉諒也【イワスギリョウヤ】の長年の友人の名だ。そこら辺に居そうで居ない名前である。彼自身で付けた名らしいが、由来は知らない。
 流人の話を信用するに、彼は江戸の世に生まれた妖怪らしかった。岩杉はそういうモノには不得手なので詳しい事は知らないが、人には鬼と呼ばれてきたらしい。確かに背中まである髪は自然には有り得ない群青色で、瞳も同色である。現代ならまだしも、江戸時代にはそこに居るだけで珍しがられただろう。そして数百年を生きながら、未だにこの日本列島から出たことがなく、普段から和装を好んでいるのだから筋金入りだ。
 そんな彼はここ東京郊外の紅葉通で雑貨屋を開いている。特に商品にコンセプトは無い。またその商品のほとんどを彼は自作している。表には出ないがある意味発明王だ。但し駅には近いが裏通りの為、客はまず居ない。居ても近所の常連か、岩杉のように旧くから見知った仲の人間――かどうかは判らないが――だけだ。

岩杉は店の前に立った。何となく、見上げてみる。空には雲ひとつ無かった。
20年以上店主と付き合った彼が一番疑問に思うのは、何故店名が『日本人形』なのか、だ。

古ぼけた木の扉に手を掛ける。古いように見えるのは気のせいで実は築10年弱、キィキィ音が鳴るのは店主の管理が悪い為。
カラン、と小気味良い鐘の音が鳴る。

「あ」
中に居た店主ではないもう1人の人間が声を上げる。天性の淡い茶色の髪、銀縁眼鏡を掛けている。瞳は青紫。椅子に座っているので傍目に身長は判らないが低い。中学生だ。手に色のバラバラなルービックキューブを持っている。
 名を秋野冬雪【アキノフユキ】と言い、中学教師である岩杉の担任する生徒である。少々、扱いに難あり。小学校時代に少し付き合いがあって、普段から他の生徒よりは話す機会が多い。この店に入り浸り始めたのはつい最近の事らしいが、既に岩杉がここの常連である事も知っている。
「やっほ、先生。今流人がお茶淹れてくれたトコだよ」
「あぁ……俺にも貰えるか?流人」
「えぇ、もとよりそのつもりですよ――」
蒼髪の彼は仄かに笑って湯のみに緑茶を注ぐ。実年齢を考慮すればかなり年下であるはずの岩杉に対し、彼は敬意を払う。理由も一応知ってはいるが、個人的にいただけないのでここでは敢えて述べない。岩杉はカウンター向かって左、冬雪と反対側の椅子を確保して座った。椅子と言っても図工室とか美術室とかにある木の椅子に背もたれを付けただけの、工芸で作るような簡素なものだ。技術者でもある流人が自分で制作したのであろう事は言うまでも無い。
 岩杉は何となく、店内を見回してみた。
「――なぁ、あそこに掛けてあった謎の物体は売れたのか?」
「あー、あの長いヤツ」
「…………邪魔だったので撤退したんですよ」
答えながら、流人は2人に湯呑みを差し出す。岩杉は苦笑しながらそれを受け取った。
「ありがとう。まぁ……売れる訳も無いか」
「なッ、何を言いますか岩杉さん!!ボクだって一応店で生計立てて生きていられるんですからそれなりに――」
「常連さん多いみたいだしね」
「そう!ほら秋野君だってこう言ってくれてるじゃないですか」
「……俺は店じゃなくて、物体に対して言ったんだよ。正体不明で商品説明もナシ、常連だって何なのか判らないシロモノだ」
「屁理屈ですッ」
「聞きゃ判るだろ」
「判りませんッ」
言い訳だ。第一、それなら説明してくれればいいものを。
「……とにかく、ボクの『作品』をこれ以上バカにしたらもう店に入れませんからねッ」
「何だよ、バカにはしてないだろ?」
「充分してます」
「商品説明をしない流人が悪いんじゃないか」
「…………」
何故そこで止まる。岩杉は湯呑みの茶を飲もうとしたが、まだ熱かったのでやめた。
「それで流人、ホントは何だったの?あれ」
冬雪も同じ質問を投げかける。その手に握られているルービックキューブは、いつの間にか元の揃った状態に戻っていた。
 カウンターに立つ流人は少し悩んでから、小さな声で答えた。


「…………天井用掃除機……」


唖然。
天井を掃除すると言う話は生まれてこの方、聞いた事がない。相変わらず斬新な発想である事は認めよう。
が、その意味があるのかが不明だ。掃除機で片付けられるような汚れは天井にはつかないだろうと思う。
「…………そうか」
「…………なるほどね」
2人ともが差し障りのないコメントを述べ、その場が静まり返る。冬雪が茶を飲んでごまかしている。岩杉もそれに倣おうとしたがまだ熱かった。この熱さでも飲める冬雪がうらめしい。
「……いいですよ別に、褒めてもらわなくても慣れてます。発明なんてそんなものでしょ」
確かに世の発明家は時に奇妙なものまで発明している気がするが。岩杉は「まぁな」とだけ答えておいた。
「で?如何ですか、そちらの調子は」
「調子?」
「オレは絶好調だよ。中間も終わったしね」
「お前、先週の調理実習で調子に乗って大事件起こしたそうじゃないか」
「うッ……な、何で知ってんだよッ」
「……そりゃ、家庭科室で火柱騒ぎ起こせば連絡も来る」
怪我人が誰も居なかったのはせめてもの救いだ。
が、張本人はため息を吐き、
「……悪いのはコンロだよ」
と呟いた。
「間違いなくお前だろッ!」
岩杉は思わず突っ込んだ。
 冬雪は天性の料理音痴だ。但し料理が嫌いという訳ではない辺りがまた怖いところである。人の見ていない時に、彼にキッチンを任せてはいけない。
そんなところが、かつて岩杉の知っていたとある人物に似ているのがまた――……懐かしくもあったのだが。
「やだなぁ先生ってば、人聞きの悪い」
「だったら無機物に責任転嫁するな」
「それじゃ、にんじん玉ねぎじゃがいもが悪い?」
確かに有機物である。
「意味が違うわッ!」
「……オレは普通にやったつもりだったんだけどなぁ」
それで火柱になるから怖いのだ。包丁で指を切るのは日常茶飯事、今も何本かの指に絆創膏が巻かれている。
 一番不思議なのは何故右手の指も切っているのか、だ。一体彼がどのようにして怪我をしたのか、岩杉には想像もつかない。
「何だか凄いんですね……秋野君て」
「別にただ料理ベタなだけですよーっと」
この期に及んで開き直るか。
岩杉は声に出さずに笑って、胸ポケットから煙草を1本取り出して火を点けた。自他共に認めるヘビースモーカーだが、ある程度は控えるようにしている。そうでもしないと煙嫌いな姉とは1時間も同席していられないだろう。尤も、1日合計5時間の授業中全く吸わないでも平気でいられる辺りはまだ正常なのかと勝手に思う。
「そういえば、緑谷で怪人が出たって騒ぎになってましたね」
流人が頭の上に花でも咲かせていそうな勢いで笑顔を浮かべながら言う。
「……『そういえば』?」
「……オレ怪人?」
「えッ、いやそういう意味では全然無くてッ」
言い訳じみている。
「まぁそう思われても仕方ないな、秋野の怪人っぷりは」
岩杉はここでようやく茶に口をつける事が出来た。自分が相当の猫舌である事は悲しいぐらいに認識している。
「オレって怪人だったかなぁ」
(真剣に悩むなッ)
声に出さず突っ込んでから、茶をがぶ飲みしてその心の内をごまかした。
「そうじゃなくて……巨人です巨人」
「判ってるよ。その話は俺も聞いてる」
「地元住民は皆知ってるよね。どっからどう伝わってんのか知らないけどさ」
口コミ以外の何がある。まさかそんな記事が新聞雑誌に載る訳ではあるまい。
「何でしたっけ、2メートル半……でしたか?何だかすごく微妙な数字だと思った記憶が」
「単に天井が2メートル半しかないってだけだ。俺が手伸ばして少し届かないぐらいだからそんなモンだろ」
岩杉の身長は今年春の計測で180cmと数ミリ。実際に天井に手を伸ばした事はないが。
「図書館だったよね」
冬雪が付加情報を流す。
図書館の天井があまり高くても本が取れないだけである。それだったら階数を増やした方が使い勝手がいいだろう。
しかし2メートル半では巨人としては微妙なサイズだ。世界中探せば何人も居るだろう――……日本ではそうもいかない、と言うところか。
 ここまでが『地元住民が全員知っている』噂の概要である。図書館に天井ギリギリの巨人が出た。1文で説明出来てしまう程度に過ぎない。
「秋野君はそれ……信じてるのかい?」
流人の質問に、冬雪はルービックキューブをくるくると回しながら答えた。
「うーん……まぁある程度は。調べてみないと判んないけどね」
「秋野それ、調べる気なのか」
「うん、何か面白そうじゃない?」
子供らしい笑顔を浮かべ、彼はそう言った。
こうしていれば、本当に普通の子供でしかないのだが――……彼の秘密を知る岩杉は時々思う。

――彼の姓は本名ではない。

通称で学校に通わなければならないほど、彼は自身の本名を――……否、その一族を、その性質を嫌っている。
岩杉は敢えて彼の事を中学入学以前から知っていた名ではなく、通称の姓で呼んでいる。それが彼を表す言葉なのだと、認める意味を持って。
 子は親を選べない。岩杉自身がそう思うからこそ、彼には共感し得るのだ。

「……答えが判ったら教えてくれ。少し興味が沸いた」
「あー、ボクにも宜しく。それからこないだ言ってたクッキーも持ってきてくれると嬉しいな」
「うん、勿論」
それからはいつも通り、何の変哲もない雑談をして解散となった。
 ここはそういう世界。何気ない日常と考えられない非日常の混ざり合った――そんな、世界。

   2

 秋野冬雪がその噂を聞いたのは、一昨々日の昼休みだった。校長の趣味でかこの中学は弁当制で、その日もいつものように彼は目の前の席に座る幼なじみと机の端を合わせた。ちなみにこのクラスでは1年次からずっと席替えがなく、名簿番号順に並んだままだ。よって冬雪の席は窓際の前から2列目。1列目に座るのが幼なじみの藍田胡桃だ。名前から女子と勘違いする人間も多いが、間違いなく男である。天使の輪が出来る黒髪と金縁眼鏡、一見して真面目そうに見えるが真偽は微妙なところだ。学級委員ではある。
 胡桃は弁当箱を開きながら、いきなりその話を切り出した。
「――なぁ冬雪、聞いたか?図書館に巨人が出たとか言う話」
「……はい?」
毎度のごとくきつく縛られたナプキンを解いていた冬雪の手が止まる。
「知らないの?へぇ、冬雪にしちゃ珍し」
「巨人って……そんな、現実離れした」
「でも2メートル半だってよ。居ないとも言い切れないじゃん?」
ギネス記録がどれぐらいだったかは憶えていないが、それよりは低いだろうと言う事は判った。確かに言い切れない。引き続き悪戦苦闘した冬雪はようやく弁当箱にめぐり会えた。
「……で、誰がいつ見たの?図書館なんて、人いっぱい居るんだろ」
「朝職員の人が入った時に、だってよ。カウンターあるだろ?そこンとこだよ。んで、その後そいつは事務所の方に入っていったんだと。見た人は慌てて事務所に行ったけどそこには巨人なんて居なくて、先に来てた人たちも見てないって」
「……見てない、って……幽霊じゃないんだし。それだけだったらそこまで騒ぐ事もないじゃん」
「ったく、夢が無いな、オマエ」
そこまで言われる筋合いは無い。
胡桃は豪快におかずのタコウィンナーを食べる。何故にタコ。突っ込みたかったが、そんな事を突っ込む勇気は無かった。
「……話ってそこまでなのか?何かもっと細かい話は無いの?」
「いや……細かったから肩車とは考えられない、とか言ってたかな」
「じゃ、特に被害とかは無かったんだね」
「無さそうだな。書類が2,3枚落ちてたぐらいだとか」
それぐらいだったら日常的に起こりうる。
 しかし――……自分しか見ていない巨人の話を噂にしてしまうとは、見たという従業員も大したものだ。ある意味凄い。

 冬雪は周囲を見回しながら、何となく考える。午後5時、町の図書館はまだ人も多い。読書感想文の為に本を借りに来て以来、図書館になど訪れていない冬雪にとってはある意味未知の場所だ。2階になど上った事も無い。とりあえず、玄関ホールに設置してある自動販売機で缶のみかんジュースを買い、ベンチに座ってそれを飲んでいた。図書館はなかなかに遠いところにある。自転車を漕いで来れば喉も渇くのだ。
(……肩車、か)
 図書館で、しかもカウンターで肩車をする必要性が何処にあるか。本を取る為、と言うならまだ判るがカウンターと言うのは奇妙しいだろう。通常、大人が肩車などする方が珍しい。その路線で考える方が間違っているのか、否か。
 冬雪はジュースを飲み干そうと上を向いた。視界の明度が妙に落ち着かない。慌ててカウンターの方を見る。
「……なーるほど。そう来たか」
誰に言うともなく呟いて、冬雪は缶をゴミ箱に棄ててすぐに退散した。結局図書館に何をしに行ったのかは彼自身よく判らない。しかし漫画の置いていない図書館では、彼を満足させるものは何一つないだろう。そもそも日本語の文章が苦手な冬雪にとって、図書館など居心地のいい場所ではなかった。

   *

 その翌日午後5時、再び紅葉通、日本人形にて。冬雪が油の切れた扉を開けると、カウンターには何故か岩杉が座って雑誌を読んでいた。
「あれ……先生が店番中?」
「店番と言うよりはただの番犬かな」
のんびりとした口調で岩杉は答えた。自分で犬と表現するか――……。一番奇妙しいのは冬雪より先に岩杉がここに来ている事なのだが、それについては敢えて突っ込まないでおく。
 言いたい事はよく判った。客が来ても彼は最低限の事以外は何もしないつもりだ。面倒くさがり、である。
 そんな会話を交わしていたその時、店の扉が開いた。
「ただいま、いやぁなかなかの収穫だったよ……ってうわぁ!秋野君、来てたのかい?」
「今来たトコだよ。……何それ、買物?」
「そこのスーパーでタイムサービスやってたんだ」
大いに庶民的。冬雪は笑った。岩杉が雑誌を持ったまま立ち上がり、カウンターから出てくる。それからいつもの席に座った。冬雪もいつもの椅子を確保する。
「あ。そういえば巨人の件はどうなったんだい?調べはついた?」
「あー、まぁ大体ね。飽くまでもオレの想像だけどさ」
「それでいいよ、もとよりそのつもりだからね。ねぇ岩杉さん」
「俺に同意求めるなよ」
「だってそうでしょう?」
「……知らん」
「……秋野君、聞かせてくれ」
流人は椅子に座る。岩杉が雑誌を閉じる。
 冬雪は口を開いた。
「多分、だけどね。やっぱりあれは肩車だったと思う」
「……違うように見えたと言っていたけど?」
「『暗くてよく判らなかった』んだったら、肩車じゃないなんて断言できないと思うよ。角度によっては細く見えると思うんだ……こう、斜めとかさ」
「図書館で肩車なぁ……それが一番意味不明だと思うが」
「そう、それ!それがね、オレが思うに一番自然な答えが見つかったんだよ、実際行ってみて」
先刻から無気力な表情をしていた岩杉の瞼が普段より大きく開いたような気がした。気のせいかも知れない。
冬雪は話を続ける。
「多分……蛍光灯を付け替えようとしてたんだと思う。カウンターの電気だったら、切れたままには出来ないだろうし……一番最初に来てたその人たちが、切れてた蛍光灯を肩車して」
「脚立使えよって話だな」
「見つからなかったんじゃない?」
「あってもいいところですけどね……図書館なんですから」
「肩車したかったんだよ、きっと」
本人たちの気持ちなど知るまい。
いつの間に淹れていたのか、流人が2人に茶の入った湯呑みを差し出していた。冬雪はそれを受け取った。
「『巨人』を誰も見てないって答えたのは多分、見た人が……『そこで巨人を見なかった?』って訊いたからだろうね」
「あぁ……誰もそんなモン見ちゃいないんだから判らなくて当然だな。『居なかったか』どうか訊けばいい」
「詳しい話すれば判ると思うけどね」
「ってことはあれですか、図書館職員の笑い話を噂話にした、って事も考えられる訳ですか?『今の面白いな』って感じで」
流人案、筋が通っている。
岩杉が笑う。
「そうだな、それは有り得る……噂なんてそんなモノだしな」
「えーっと、六十五日?」
諺は不得手だ。判らないので疑問形にしておいた。
「七十五。もう少し残るだろ」
即答。怒られはしなかった。
「もう少しどころかかなり残ると思いますけど……」
「世の中諺通りになんて行く訳ないだろが」
岩杉は湯呑みを片手に適当な口調で言う。但し茶は飲んでいない。冬雪は少し笑って応答する。
「まぁね……そもそも噂だし、本当かどうかも定かじゃないし」
「それだったら秋野君の調査は何の意味があったんだい?本当じゃないんなら」
流人が不思議そうな顔をして尋ねてくる。
冬雪はニッコリと笑って、返した。
「本当と本気は同義じゃないよ。本気で調べて、楽しければそれでいいの」
「そうそう、世の中楽しんだ者勝ちだぞ?」
岩杉の思いがけない同意に驚き、冬雪は腹を抱えて笑った。
 それを見ながら、流人が呟く。
「……人間って不思議なモノですね」
岩杉が答える。
「だからこそ『楽しまないと』」
冬雪は茶を飲みながら、何となく考える。
 何が起こるか判らないこの世界。
 何があっても――……楽しめるようになりたいと、ふと思うそんな日常。



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